2018年(平成30年)7月に相続法の改正が行われました。約40年ぶりの大改正となります。背景としては、平均寿命が延び、社会が高齢化する中で社会経済の変化に対応する必要があるという事情があります。
今回は、その大改正の中から「自筆証書遺言の方式緩和」について、解説します。
改正の概要
遺言書の方式(種類)としては、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあります。今回の改正ではそのうちの「自筆証書遺言」の作成方法が簡単になりました。具体的には、今まで全文を自筆しなければならなかったのが、改正により、財産目録についてはパソコンで作成可能になりました。
※ただし、財産目録の各ページに自筆で署名して押印をする必要があります(後述)
どうしてこのような改正がされたのか、経緯をみてみましょう。
改正の経緯
今までは、不動産について遺言で相続人を指定したり、第三者に贈与するためには、地番や面積など登記簿(登記事項証明書)に記載された事項を記載してその不動産を特定する必要がありました。また、預貯金についても金融機関名や口座番号等の事項を記載しなければなりませんでした。
しかし、財産が多数ある場合にすべての事項を手書きするのは相当な負担となります。特に、高齢者にとっては負担が重く、このことが自筆証書遺言の利用を妨げる原因となっていると指摘されていました。
そこで、改正法では、作成の負担を軽減するため、財産目録の部分に限り、パソコンで作成するなどして添付することができるようになりました。また、登記事項証明書や通帳のコピーの添付でもよいことになりました。
〇 パソコンで目録を作成
〇 通帳のコピーを添付
財産目録を添付するための条件
- 添付する財産目録の各ページに自筆で署名し押印することが必要です。
- 本文は全文自筆することが必要です。
- 添付する財産目録は本文を書いた用紙とは別の用紙で作成する必要があります。
その他の注意点については、法務省のサイトにも記載がありますのでそちらもご参照ください。
施行開始日
この改正は、2019(平成31年)1月13日から施行されます。施行日以前に作成された自筆証書遺言については、改正前のルールに従います。
その他:遺言書の保管について
今般の相続法改正に合わせて、新たに「遺言書保管法(法務局における遺言書の保管等に関する法律)」が制定されました。
この遺言書保管制度の施行日は2020年7月10日(金)です。
この制度を利用することにより今まで必要だった「検認」の手続きが不要になります。作成した自筆証書遺言の保管方法の一つとしてぜひ検討するのがよいでしょう。